レネ・マリー・フォッセン

2021年09月13日

先日、NHKの「ドキュランドへようこそ」で「セルフポートレート 拒食症を生きる」というノルウェーのドキュメンタリー番組を観ました。レネはその主人公であり、10代で拒食症が始まり、20代後半で写真家として注目されました。
レネのは自らの姿を写真に撮り、「痛みの中に美がある」とありのままの自分をさらけだすことで写真家として認められました。自身の圧巻の写真だけでなくノルウェーの美しい風景もとても印象に残るドキュメンタリーでした。
彼女の写真だけでなく、彼女自身の言葉もとても心に響きました。その中の彼女の言葉のいくつかご紹介したいと思います。

「痛みの中に美がある きれいじゃないけど 美しい」
「負の感情や苦痛を。生きることの痛みと、そこにある美を表現したい」
「私の中に恐怖、怒り、悲しみが渦巻いている。今まではそんな感情を閉じ込めてきた。箱を開けたらあふれだしそうで怖かった。それを解き放つことが回復への道だと思う」


まさに彼女は「感性」の塊です。写真を撮ることは自身の記録だけでなく、彼女が感じていることを感じているままに表現するものでもありました。彼女の感性が解き放たれた「ポートレート」のエネルギーはすさまじく圧倒されっぱなしでした。また、彼女の写真に注目し、彼女自身を写真家として世に注目されるよう導いたプロの写真家の方が彼女のことを「拒食症」の病人扱いすることなく、お互いが「写真家」として感性が響き合う姿にもとても感動しました。

「命とはそこにあるがゆえに愛されるもの 難しきは命が望むままに自由に生きること」
という美しい詩を読み「どんな凶悪な人でもみんな幸せになりたいと思っている、でもそれは難しいこと」「人生は素晴らしくて謎に満ちた壮大な贈り物だと思う。だけど手に負えない」と彼女自身の言葉で語ります。

2019年10月22日 レネは長年の栄養不足による心不全でこの世を去りました。

この番組にとても衝撃を受けましたが、一切のナレーションを入れずに、登場人物の言葉だけで綴られていく映像は美しく、だだのドキュメンタリー作品ではなく、まるで一つの芸術作品のように感じ、崇高ささえ感じました。